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ファンタスティックヒストリー 超島原幻闘録 ~柳生十兵衛地獄変~ 第3章ー20

 此処は東海道の宿場の一つ、滋賀県との県境に近い三重県坂下(さかのした)。
 「転び石」と呼ばれる2メートル程の石が街道に落ちて来てそれを避けると同時に無言の暴漢に囲まれた柳生十兵衛三厳と柳生兵庫助利厳の2人。
 しかし、素性が知れぬとは言え、見るからに剣豪2人をなめ切った軽装で、みすぼらしく「撒き菱」や「埋(うず)め火」と云った「戦術」、「謀り事」どころか無様にも「計画性」すら無い様な所謂素人連中で更に「陣形」も何も無い。
 「何だ此奴等?」いぶかるも後、考えられるのは…?「あっ!飛び道具だ!」転び石の落ちて来た所から伏兵が狙って居るのかも知れないと年季の入った利厳が三厳に教えた。
 成程、素早く2人を取り囲んだ素人暴漢でありながら本気で攻めて来る様子が全く無い…。
 注意を暴漢に引き付けて置く為なのであろう、もし鉄砲「隊」だったりしたらひとたまりも無い、かと言ってどうしようか良い考えも浮かばないし考える暇も貰えまい。
 「万事休すか」と諦めかけた時である。
 「ぬっ!」
 今迄天気等さして気にも留めなかったが今回の旅で初めて昼間突然の雨に見舞われたのである、しかも雷迄鳴りだした。
 通り雨であろうか?しかし本降りである。
 当時の鉄砲は火縄であって雨で使えなく成る、暴漢共に動揺が走る。
 此の期を逃さず暴漢共に向かって斬り付ける三厳と利厳の2人。
 戦意を喪失した暴漢共は散り散りに成って逃げ…い、いや1人だけで大声で「逃げる者は斬って捨てるぞぉ!」と次々に逃げる仲間の首だけを明らかに「落ち着いて」撥ねて居る頭目らしき漢が居た。
 見覚えが…「あっ!」
 不気味な笑みで低くとも野太い声の漢が言う、「我こそ覇王の御子神典膳(みこがみてんぜん)ッ!くたばれ柳生ッ!」まさかの丁度10年前に死んだ事に成って居た小野次郎右衛門忠明(おのじろうえもんただあき)こと御子神典膳(同一人物)が登場。
 60歳で死んだ事に成って居るから今年で70な筈である。
 「生きて居たとは」当時、死亡届は死体の確認をしても真偽が定かでない程でいちいちの確認すらせず柳生の所で新陰流の腕を磨いていた荒木又右衛門保知も突然死と成っては居るが紙切れ一枚で隠密行動を…と云う事に成って居る。当時としては人が生まれても衛生上死亡率が高く5歳迄生き残った者のみに出生届が義務付けられ「間引き」と言って食い口減らしにわざと生かしては置かない者も少なからず…。双子とも成れば今度は「気味悪」がられ片割れが殺処分とされた、徳川家康とお万の方との子である結城秀康はそも双子と云う事だったらしい。
 よく「武士道とは死ぬ事と見付けたり」等と云う言葉が有ったりして、時代劇でも大太刀回りのクライマックスの後で殺された悪代官が「病死と発表された」で終了するが当時はそんなえげつない事が公然とまかり通って居た感覚であった。
 しかも相手が先述の様に強いだけの下衆い単細胞で仲の良い友どころか悪友の1人すら居ない悲しい者と来て居る。
 後は柳生に勝てようと負けようと永遠に蔑まれ罵られて自身の実力と自尊心にしがみ付いて地獄へ行くだけである。
 此の漢は「狂死」とされて居り眼からして普通ではない、だが三厳の父、宗矩を「軽くあしらって勝った事が有る」漢。
 本当に本人ならそうであるがどうでも良い時代、現在だって「成りすまし」が存在する。
 まだ雨が降って居り相手もだが足下が滑り易く成ってしまった。
 利厳が三厳に耳打ち…。「悪口で彼奴の心を乱れさせ油断をさせたい。」成程「その手が通用する相手」であった。
 2人で忠明を罵る。
 利厳:「未だ居たのか、死に損ないが」
 三厳:「命乞いをすれば新陰流に入門させてやる、先ずは薪割100本から…」
 忠明:「抜かせぃ!俺に負けた宗矩の小倅が適うと本気で思って居るのかっ!バラして刻んで磨り潰してくれようぞ、貴様等ーっ!」
 誘いに乗って忠明が走って来る!
 忠明:「死に腐れーっ!」
 逃げる振りだけする三厳、忠明の後ろに回った利厳、挟む事で尚の事忠明を挑発する。
 忠明:「頭来たぜ!」
 忠明の豪打が上段から利厳目掛けて下ろされる、間一髪でかわすと今迄利厳が居た後ろに有った2メートルの転び石が真っ二つに割れる。
 忠明:「我、悪鬼羅刹と成りて目の前の全ての敵を斬る!」
 今度は振り向き様に三厳を横薙ぎにしようとする。
 互いに足下が悪く滑って転んだ方が死ぬ、距離も取り辛い、雷が鳴りっ放し、そして…。
 バリバリバリドオオォーン!まさに闘いの現場の近くの大木に雷が落ちて一帯が火の海に成る。
 此処、坂下は微妙では有るが本当に坂道に成って居て、下から三厳、忠明、利厳と云う順番で、三厳から殺られる危険が高い。
 しかも今の落雷で煙が出て悪い事に風向きが三厳の方に来て居る、即ち利厳からは忠明が見えるが忠明からは三厳は見えても利厳は見え憎い。
 火に囲まれた狭い場所はそう云う状態であった、一瞬の決断が生死を分ける最早実力等どうでも良い心理戦である。
 利厳は三厳の危険を察し忠明目掛けて無言で走って行き斬り上げる、先に三厳を始末して利厳と対峙しようとして居た忠明より僅かに決断が早かった。
 新陰流の技、二ッ角羅刀(にっかくらとう)が決まる!
 忠明:「ぐえええええーっ!」大量の血飛沫が上がり倒れたのは忠明の方であった。
 狼狽えて居た三厳の所に駆け寄る利厳。無事に感謝し固く手を取り合う2人。
 忠明:「ち、畜生奴…、き、貴様等如きに屈するとは…ッ!」倒れて事切れる忠明、何時しか雨が上がって居た。
 己の未熟を恥じ此の恐怖と共に新陰流の修行に励むと決心して歩き始めた三厳、利厳と偶然出会った運命にも心から感謝した、生まれて初めて「生かされて居る」と悟ったのであった。
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ツバサ
(2019/08/04)


久し振りの小説ですね(´∀`)
柳生十兵衛三厳と柳生兵庫助利厳の2人が襲われたところで前回は終わりましたが、
敵もちゃんとした頭目がいたんですね。
敵も手練れでしたが、
今回は何とか勝てて良かったです^^
二人の次なる目標がどうなるのか気になります。

結城たかみ
(2019/08/04)


 ツバサ様、お便り誠に有難う御座います、嬉しいです。<(_ _)>
 そうなんですよー、久し振りで…。
 実は細かい部分で長らくあーでもない、こーでもないと迷いながら考えて居たら突然それとは関係無く良い考えが出て来て纏まってあれよあれよと言う間に書き上げられました。
 不思議な物です。
 二人の次なる目標は京都三条大橋から大阪→船で九州へ向かうのですけど今度は半蔵正成の息子で自滅没落しておきながら柳生を逆恨みで付け狙う愚劣無能な3代目、服部半蔵石見守正就の横槍が入る事に成って居ります。どうかご期待下さいませ。<(_ _)>

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Author:ガオ
 宮崎の者で御座います。
 個人的に調査をした事を発表して居りますブログです。
 令和3年7月です。22日は海の日、23日スポーツの日から東京オリンピックが始まる予定です。
 引き続き健康第一!マスクにうがい、手洗いをどうか、宜しくお願い申し上げます。<(_ _)>

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